スケジュール Schedule

1999.7.7

1999.7.7
喜びの朝を信じて


自分でこれでよいと満足すれば進歩がない
厳しすぎるプレッシャーは自然な演奏が阻害される
演奏する自分をコントロールするもうひとりの自分
そしてそれを囲んでくれる大切な人達
その存在に支えられ励まされていることを
この数ケ月強く感じています

最近の私の朝に水やりという日課が加わりました。3つのバラの鉢は、庭にひとつ、バルコニーに2つ置かれ、それぞれが持って生まれた色と芳香で私と家族に幸せを贈ってくれています。
日々、時にはその日の朝と夕に表情をかえる可憐な姿、心を和ませる豊かな香りに、私は自分が求めているものの理想形を知ることが出来ます。
土を作り、鉢を求め、肥料をまき、苗を植える。芽が動き、枝が伸び、葉が拡がっていく。やがて蕾がつき、ふくらみ色づく形にあふれる期待。そして、開花した姿を見る至福の時の訪れ。その喜びに包まれる時間は、それまで費やした時間の何分の一であったとしても、全ての苦労はここに報われます。
私が私のために育てるバラ。私がピアニストの私に贈るためのバラ、しかし、目の前のバラは私だけでなく家族にささやかな喜びを与え、疲れた友人の心をも癒してくれるのです。私の育てたバラにはそんな力がありました。私のために育てたバラなのに私以外の人をも救っているのです。
なぜ私はピアノを弾くのでしょう。
なぜ私はバラを育てるのでしょう。
それは身体的な食事や睡眠という欲求には不要でも、精神的な、心の栄養や休息には必要と信じているからなのです。
光、水、風、そして愛情。バラを育てるための私の思う4大条件。3つは自然から、ひとつは心から。
光を集めて、水を貯え、風に吹かれながら、芸術という人類の生んだバラを育てることができればと願います。私は、咲くことなく運命を終えた蕾を忘れてはいません。運よく咲いた花の脇には、そうしたはさみの後があることを覚えています。こうしたひとつひとつを覚えていれば、今日を乗り越え、愛することで明日に向かって行けるでしょう。
今、この夢は開かなくとも、必ずいつの日にか訪れる、喜びの朝を信じて。


しばらくの間、ウェブのリニューアルをお休みしていました。たくさんの方々から、「元気?」「身体は大丈夫?」というご心配、「なぜ更新しないの?」という素朴な疑問、「更新して」というご要望からお叱り?まで、いろいろなメールを頂きました。
ピアニストは、弾かなければ何も伝えることができません。ピアノを弾いて表現するという行為は、自分の全てをさらけ出すことです。しかしそこに現在の疑問を感じていた私は、自分を信じることのできぬまま、皆さんの前に文字を使って登場することができませんでした。
今日は、私の生活に香りを届けてくれているバラに託して、現在の心境を久しぶりに綴ってみました。
これから、時間をかけて、じっくりと心のバラを育てていきたいと思っています。



1999年 7月 7日
 宮谷 理香

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