スケジュール Schedule

1999.1.15

1999.1.15
-新しい旅立ち-


 最近どこかへ旅をされましたか?
 私は98年からいろいろなところへ旅をしていました。過去や未来、想像や理想という内的世界で過ごす旅です。私にとってそれは「充電」ともいえる時間であり、また新たな旅立ちへの決断を導く助走であったと今では振り返ることができます。
 98年を出来るだけ充電にあてることは以前から考えていました。これまでは、言ってみればデビュー前の人間・宮谷理香とプロになってから成長した人間の部分でピアニスト・宮谷理香を支えていたのですが、これからは人間の部分とピアニストの部分がいかに良好な関係を維持し成長できるかを話し合う必要性を感じていました。職業によっては公・私が分けやすいものもあると思いますが、私の選んだ道では少なくとも私にとっては非常に密接で、互いの行動思考が強い影響を与え合い、明確に分けることが難しいのです。
 ですから私にとっての「充電」とはレパートリーの拡大のために多くの曲を仕上げるためというだけの時間ではなく、充電という名の私が私自身と対話し、また思索する時間を創ることでした。
 未来への飛躍のために、遠い過去と瞬時に過去になっていく現在を助走路に整備する充電という作業は、内心(心的)世界ではとても孤独で、心の底に眠りについていた過去を掘り起こし、その過去の時間層のなかに、時にはより深淵とも言える心のひだに、未来への提案と警告を探す心の旅です。
 いくつものコンサートをスケジュール通りにこなしながら、自分自身との対話、未来への模索の時は常に私の奥にありました。

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1999年。新しい年が始まりました。
 そしてこの日が来ました。しばらく前から、近いうちに自分と向き合い、決断すべき時が来るとどこかで感じていました。これまでの人生の中にもこのような時がありました。自己を見つめ、等身大の自分を認識することで、次に進む道が見えてくるはずです。
 でも、残念ながら新しい年に新しい道を「これです」とみなさんに示せるものはありません。




 私もまた迷い、模索し、探し続けているのです。でも、今日まで、その自分を認めようとはしていませんでした。迷い続けながらも、結果を求めず歩き始めている自分を認められた今、ようやくこうして皆さんにメッセージとしてお伝えする勇気がわいてきました。

 今まで多くの人との出逢いが私を支えてくれました。私ひとりの力では成し得ないことを、たくさんの方々の励ましやお言葉、お手紙、メール、笑顔や握手・・・に支えられて成果として残すことが出来ました。これまで出逢ったすべての人に心から「ありがとう」と感謝の気持ちをお伝えします。
 ふりかえれば歩いてきた道があり、これからの未来に勇気を与えてくれる景色が広がっています。しかしそれは誰もが戻れない道。
 新しい年にもう一度原点に戻って、私自身の道を探す決心をここで皆さまにお伝えしようと思います。「自分」という小さなフィールドに留まるのでなく、また自分自身で限界やボーダーラインを引くことなく、大きな視野でもう一度音楽とむかい合ってみたいのです。結果の見えない、終わりのない旅だからこそ、今しかできないことを探したいと思うのです。
 1999年、デビュー3周年を迎える宮谷理香を、今年もどうぞよろしくお願いいたします。



1999年 1月 15日
 宮谷 理香

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